不動産に対する強制執行(強制競売)を止めることができた事例
お悩みの問題:不動産トラブルその他
担当弁護士:大友 竜亮
事例
依頼者の亡き夫は、生前に貸金業者から訴訟を提起されており、「夫は貸金業者に300万円支払え」という内容の敗訴の判決が出ていました。その後、夫は亡くなり、自宅を含む亡夫の財産については、妻である依頼者が相続をしました。その後しばらくたって、裁判所から、亡き夫の判決に関する執行文(強制執行ができるという証明書)が妻である依頼者の下に届いたという状況でした。
依頼者としては、亡き夫が裁判を受けていたこと、敗訴の判決をもらっていたことについては全く知らず、いきなり裁判所から執行文が届いて驚くとともに、自宅をどうしても手放したくないと考えており、どうしたらいいか分からず悩まれて、ご相談にいらっしゃいました。
- 解決までの道筋
- 執行文が届くと、大抵すぐに強制執行が始まります。執行文とは、判決の内容を強制的に執行できるという証明書のことをいい、基本的にはこの証明書が出されると、強制執行が可能になります。本件の場合にも、依頼者が相談にいらして数日と経たずに、裁判所から強制執行開始決定(自宅について強制競売を開始する旨の決定)が依頼者の下に届きました。
本件については、亡くなった夫が生きていた時期に受けた裁判に基づく強制執行ということでしたので、まずは時系列の確認を行いました。なぜなら、判決を受けた場合であっても、10年間の経過によって消滅時効が認められる可能性があるからです。
本件について時系列を確認したところ、執行文が出された時期自体は判決確定から10年経過していなかったのですが、強制競売の開始決定による差押登記がなされた時期ないし強制競売開始決定の通知が送られてきた時期は、判決確定から10年以上が経過していました。そこで、急いで自宅に対する強制執行を止める手続きを行うことにしました。
強制執行を止めるためには、とにかくスピードが大事です。ご依頼いただいてから、すぐに裁判所に対して、強制執行の停止を申立てるとともに、強制執行の取消しを申立てました。これらの申立てについては、消滅時効が認められ、自宅に対する強制競売手続きは停止しました。結果、依頼者の自宅を守ることが出来、無事に解決することが出来ました。
解決のポイント
1 時系列の確認が重要です
判決から10年が経つと、消滅時効が成立し支払をしなくて済むということを知っている方もいるかもしれません。しかし、正確に10年間を算定する場合に、いつからいつまでの期間をカウントするのか把握されている方は少ないかと思います。本件のケースでいうと、判決が確定した日から、強制執行の開始決定に基づく差押登記がされるとき(もしくは強制競売開始決定通知がされるとき)まで、の期間がカウントされることになります。
したがって、まずは裁判所に問い合わせをして、判決が確定したときを調べ、同時に差押登記の時期を知るために不動産登記情報を調べました。
これによって、消滅時効が成立しているかどうか、正確に把握できるようになります。本件では、執行文が出された時点は、判決が確定してから10年経つ前となっていましたが、幸いにも、判決確定から10年以上経過した後に差押登記がなされていることが判明しました。そこで、早急に強制執行の停止の手続きを行うことにしました。
2 強制執行の停止はスピードが大事です
いくら消滅時効が成立しているケースでも、執行文が出されている以上、何らかの法的措置を取らないと、強制執行はどんどん進んでいってしまいます。自宅に対する強制競売の場合ですと、執行文が出されている以上、何もしないと自宅が競売にかけられていってしまいます。
強制執行を止めるためには、とにかくスピードが大事になってきます。迅速に強制執行の停止を裁判所に申し立てる必要があります。ましてや執行文という強制執行ができる証明書が出ている場合には、いつ強制執行がされてもおかしくない状態ですので、一刻も早く強制執行の停止を行っていく必要があります。
本件の場合も、執行文が出ているケースでしたので、とにかく急いで強制執行の停止の申立てを行った結果、強制執行を止めることに成功しました。
事案の解決にはスピードが大事になってくることがあります。もう少し遅く相談に来ていたら手遅れになっていた、というケースも多くございます。何かお困りのことがある場合には、すぐにお気軽にご相談いただければと思います。
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