Q.全面的価格賠償とは何ですか
A.全面的価格賠償とは、共有物について、特定の共有持分権者が全部を取得して、他の共有持分権者に対してその代償金を支払う方法による分割方法です。
全面的価格賠償とは
全面的価格賠償は、共有物分割の方法の1つです。
共有物分割の方法には、現物分割と金銭代価分割(代金分割)、全面的価格賠償の3種類があります。
現物分割とは不動産を分筆してそのまま分ける方法、金銭代価分割とは不動産を売却してしまってその売却代金を持分権者が分配する方法です。
これらに対し、全面的価格賠償とは、不動産を1人の共有持分権者が全部取得して、その代償金を他の共有持分権者に支払う方法です。
全面的価格賠償の方法で不動産を分割すると、不動産は特定の一人が全部取得することができるので、その後はその人が自由に不動産を利用処分することができるようになります。
また、他の人は共有状態から解消されてきちんと代償金も支払ってもらえるので、当事者全員がメリットを得られる可能性があります。
全面的価格賠償が認められる場合
共有物分割を行う方法には、協議による方法と裁判による方法があります。
裁判によって共有物分割を行う場合には、常に全面的価格賠償が選択されるわけではなく、裁判で全面的価格賠償が認められるかどうかに際しては、以下のような事情が斟酌されます。
• 特定の持分権者が全部取得することに相当性がある
まず、不動産を特定の持分権者が全部取得することに相当性があることが必要です。当事者の希望やそれぞれの持分権者の持分割合、共有物の利用状況なども考慮されます。
• 不動産を適正に評価できている
代償分割を行うためには、不動産を適正に評価することが必須です。適切に評価が行われない場合に代償分割を行うと、当事者間で不公平な結果になってしまうので、代償分割は認められません。
• 全部取得者に代償金の支払い能力がある
全面的代償分割を行う際には、不動産の全部取得者は他の共有持分権者に対して代償金を支払わなければなりません。そこで、その支払いができることが必須となります。
これらの事情を総合的に考慮した上で、全面的価格賠償による分割方法が当事者の実施的公平にかない、その方法による分割が相当な場合に全面的価格賠償が認められます。(最判平8.10.31参照)
全面的価格賠償の方法
全面的価格賠償による分割を行う際には、まずは不動産の評価が必要です。
このとき、不動産の市場価格を調べます。
当事者間の協議によって不動産を分割する際には、全員が納得する方法で評価ができれば足ります。
当然、誰が不動産を全部取得するのかも決めなければなりません。
不動産の評価ができたら、その金額をもとにして共有持分割合に応じて代償金の金額を計算します。
そして、不動産を取得する人が、他の持分権者に対して定まった代償金の支払をして、共有持分の所有権登記を全部取得者に移転します。
これにより、全面的価格賠償による不動産分割手続きが完了します。
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